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みんな海に辿り着く

みんな海に辿り着く

わたしたちは誰も、今いる環境のなかで生きています。だからわたしたちの生き方、行動は、すべて環境に影響を与えています。環境を考えるというと遠大なテーマに感じるけれど、今、このウェブサイトを見ていることも、毎日の仕事も、買い物や食事も、すべてが環境の一部です。「環境を変えるなんて遠い話」ではなく、今自分のいる環境をつくっているのは、一人ひとり自分自身。行動の結果はすべて、川の流れと同じように循環の一部として地球環境を構成しています。海からはじまり、海へ還る。そんなサイクルのなかで、自分がどんなふうに生きていたいか想いをはせる。それも、地球環境を考えることでしょう。

海洋プラごみは、この手から


浜辺に流れ着くものたちが、その海の環境の縮図を示す

 海はわたしたち日本人にとって、特に身近な存在です。美しい海を見れば清々しく心地よい気持ちになるし、汚れて見える海は悲しい、見たくないという気持ちにさせられる…

 どちらの海も、自分たちの行動の結果です。いいこと、悪いことが特定されているのではなく、大きな自然の循環のなかで積み重なってきたことの結果ということです。

 ただし、海にとって「これはよくない」と確定しているものはあります。そのひとつが最近話題に上がることの多い「海洋プラスチックごみ」です。

 世界中の海岸に漂着するプラスチックごみの量は、毎年6000万トンから9900万トンという膨大な量です(日本海洋学会2023年論文より)。

 そもそも人間が毎年生産しているプラスチックは約3億8000万トンで、全人類の体重とほぼ同じになるというから驚きです。さらに、日本の1人当たりプラスチックごみの量はアメリカに次いで2位。2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が、海の魚の重量を超えるという試算もあります。

食べ続けたくないマイクロプラスチック


海を漂うプラごみも生態系と共に環境の一部となることのリスク

 中でも健康に悪影響を及ぼすといわれているのが、5mm以下のマイクロプラスチックです。もともと細かなプラスチックごみのほか、ペットボトルやレジ袋、発泡スチロールといったプラスチックごみが太陽光にさらされ、波に打たれて細かく砕けたマイクロプラスチックの影響も大きくなっています。

 マイクロプラスチックは、ダイオキシンやDDTなど、残留性有機汚染物質(POPs)と呼ばれる有害物質を吸着しやすいことがわかっています。海の中を移動しながら有害物質を集め、どこにでも運んでいきます。マイクロプラスチックを食べた小魚が中型の魚に食べられ、それが大型の魚に食べられることで、有害物質が生き物の体内に蓄積する可能性も指摘されています。たくさんの有害物質をとりこんだ大きな魚を、私たち人間も食べています。プラスチック自体は排泄されても、有害化学物質は体内に残って蓄積される可能性があります。

 私たちは魚を食べたり、マイクロプラスチックが含まれる水道水やペットボトル飲料などを飲んだりすることで、1週間でクレジットカード1枚分(約5g)、1ヶ月でプラスチック製のおたま1個分(約21g)、1年間でヘルメット1個分(約248g)のマイクロプラスチックを食べているという報告があります。(2019年、ニューカッスル大学が世界自然保護基金(WWF)の委託をうけ研究報告/FPBBニュースより)。

 環境にとって深刻な問題のひとつとして健康や環境への被害について研究が進められていますが、海洋プラスチックごみやマイクロプラスチックがよいものでないのは明らかです。これらを減らすことは簡単ではありません。けれど、一人ひとりの着実な一手として、プラスチック製品の使用を減らすこと、リサイクルを中心に正しい方法で処分することは、誰もが今日からできることです。

 6000万トンと聞いて「そんな量、自分がごみを減らしても変わらない」と思ってしまいそう。でも、そのごみだって、誰かがいっぺんに何千トン、何万トン出したわけではありません。わたしたちが日々、出し続けている小さなごみの集まりなのです。

鈴本 悠(Yu Suzumoto)

極小出版社や飲料メーカー広報などを経て、フリーランスに。ライター業、編集業をメインに書籍制作、企業や地域の広報などに携わっています。心地よく食べて飲むことと動植物が好き。最近は和服に親しみはじめています。
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