吉野の森から始まる循環の旅
2023.11.26
春の桜で名高い奈良・吉野は、日本が誇る良質なスギ、ヒノキの産地。
株式会社テーブルカンパニー代表の片山裕介さんは、間伐材や林地残材などの不良資産をアップサイクルして発酵温浴に利用し、女性たちに癒しを届けたあと再び自然へ還す取り組みをしています。
先人たちが守り培ってきた山の恵みを、意味ある循環へ。
多くの共感を巻き込みながら活動の場を次々と広げる片山さんの挑戦をご紹介します。
はじまりは日本女性の髪
『発酵温浴nifu』を運営する片山さんは、もともとオーストラリアで美容師として活躍。帰国後日本女性たちの髪に触れ、その違いに驚いたといいます。明らかに疲労していて、乾燥、栄養不足、ハリツヤ不足、そして冷えが深刻でした。女性たちに健康と美を、というのが活動の原点。まずは体を温めることをミッションと考え、“脱力”をブランドテーマに掲げる発酵温浴サロンの構想を練り、素材を探す中で出会ったのが吉野のヒノキだそうです。
好循環を生み出すシステムを着々と広げながら、より質の高いヒノキを安定的に生産するために、山の麓の廃業になった製材所を引き継ぎました。地元の方々と協力しながら加工所として整備し、現在は活動の拠点にしています。さらに、専門家と連携し美容や健康に関する学術研究・プロダクト開発も進行中。発酵温浴業界の改善改革、山林環境改善のための基準の確立など、その挑戦は多岐にわたりますます目が離せません。
人も自然も整う、誰もがうれしい循環
関わるほどに見えてくる、深刻な林業問題。中でも片山さんが注目したのが、切り落とされた枝葉や間伐材が放置されたまま残る「林地残材」です。これらは管理作業の妨げになるばかりでなく、土砂崩れや山火事の原因にもなり、土壌や水にも悪影響を及ぼす不良資産。丸太と比べてかさばり、運搬にコストがかかるため放置されてしまうのですが、片山さんは地元の林業家たちと運び出し、有効利用を進めています。
自社製材所で加工されたヒノキパウダーは、都市部にある各サロンへ運ばれ、日本発祥の発酵温浴というエコロジーな手法で女性たちを癒します。役目を終えたおがくずは畑や畜舎へ運ばれ、100%再利用し自然へ還ります。
温浴することで体の巡りがよくなり、自然の循環にも貢献できるという見事なサイクル。継続することで森は本来の機能を取り戻し、美しく安全な山林を維持することが可能だと考えています。
片山さんの活動は発酵温浴や林業だけに留まらず、共感できる仲間づくりや吉野町の地域創生へと及びます。地元酒造メーカー・美吉野醸造との新製品のブランディングにも力を注いでいます。米の旨味と粒立ち感が際立つ滋味あふれる甘酒『蔵元のこうじ』『玄米甘酒』はおすすめの一品です(a・unエシカル百貨店にて12月期間限定販売)。
温浴体験。“サラふわ”発酵ヒノキに包まれて
サラサラふわふわの温かいパウダーの中で脱力…その感触は極上の癒し。
こだわりのおがくずは、アミノ酸、乳酸菌など美容成分たっぷりのオリジナル開発『nifuの種菌』に、ヒノキパウダーとヒノキの葉、米ぬかのブレンド。葉を入れることで、ヒノキの清涼感が際立ちます。
nifuでは各専門家とともに品質改善に取り組み、日々の発酵状態のデータを素材交換の目安にし、独自の衛生基準で安全性とクオリティを保っています。
浮遊感、包まれる安心感、清らかな香り。微生物の発酵熱は想像以上のパワフルさで体の深部へ届き、汗が止まりません。体内の巡りや呼吸を感じ、頭からスーッと何かが抜けていく不思議な感覚を味わう15分の間に、女性スタッフがまめに温度調節をし、水の入ったサーモボトルを何度も手渡してくれます。最後にシャワーで洗い流すと、全身しっとり艶やか。クリアなオーラを纏ったかのような軽やかさです。大量発汗したあとにいただく梅干しと塩昆布、そして甘酒は飛びあがるほどの美味しさで、五感までくっきり研ぎ澄まされた感じがしました。
この爽快な温浴体験を日々の暮らしに、とnifuが手がけるバスアイテムを今回ご紹介しています。循環、巡り、自然を感じながら、ヒノキの森のバスタイムをお楽しみください。