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釜浅商店がつなぐ「良理道具」とは

釜浅商店がつなぐ「良理道具」とは

明治41年(1908年)創業。以来115年にわたって、料理人や道具と向き合ってきた料理道具屋・釜浅商店。その歴史を受け継ぐ四代目 熊澤大介さんは、“良い道具には、良い理(ことわり)がある”という信念を「良理道具(りょうりどうぐ)」という言葉で表現しています。良理道具とはどんなものなのか、そしてその魅力とは。今おすすめの3つの良理道具と合わせて、お話をうかがいました。

使えば使うほど愛着がわいてくる良理道具


良い道具には、良い理(ことわり)がある

熊澤さん 「良理道具を言い換えれば、用の美といえるかもしれません。私たちが扱っているのは装飾品ではなく、生活の道具。派手さはありませんが、ある仕事をさせるのに最適な形をしています。例えば包丁は、繊維を断ち切るために曲線を描きながら鋭く尖っています。長く使われている道具が現在の形であるのは、そこに良い理があるからなのです」

料理道具に限らず、さまざまな物を安価に揃えることができる現代。しかしその一方で、SDGsやサステナビリティといった価値観が問われています。使い捨てではない、道具との付き合い方。釜浅商店は創業当初から、良い道具を長く使うことを提唱してきました。

熊澤さん 「良い道具をはじめて購入されるときは、“使いこなせるのかな”と思うかもしれません。でも実際に使ってみるとすぐに慣れますし、どんどん自分の手に馴染んでいきます。確かな技術で作られた道具は手入れをすることで長く使えますし、その分、愛着もわいてくるんです」

オーブンウェアとしても使える「釜浅の鉄両手フライパン」


料理を引き立てるシンプルなデザイン

熊澤さん 「『釜浅の鉄両手フライパン』の特徴は何といっても、3.2mm厚の鉄板です。釜浅商店で扱っている他のフライパンは1.6mm~2.3mm厚ですので、いかに厚いかお分かりいただけるのではないでしょうか。この厚みがあるからこそ蓄熱保温性が高くなり、弱火にしても食材にじっくり火が入ります。ステーキや餃子などには特におすすめで、良い焼き目が付くんです。これってもう、一つの調味料だと思うんですよね。
もちろん鉄板を厚くすると重くなりますが、このフライパンは持ったり振ったりしなくていいんです。蓄熱した熱がしっかり入るので、チャーハンでも炒め物でもフライパンは置いたまま。菜箸やフライ返しで混ぜるだけでおいしく仕上がります」

取手にもこだわって、持ちやすさに配慮しながらもオーブンに入れやすい角度に調整。また、リベットではなく溶接で取り付けることで、汚れや水がたまりにくいようになっています。

熊澤さん 「使い勝手が良いので、わが家でも大活躍です。炒め物はもちろんですが、チキンをのせてオーブンで焼いたり、グラタンを作ったり。調理後はそのまま食卓に出して、テーブルウェアとして使えるのも気に入っています」

釜浅商店のInstagramには、鉄両手フライパンを使ったレシピ動画が公開されています。パエリアやアクアパッツァに加えて、ファーブルトンという焼き菓子も。ぜひ参考にしてみてください。

鉄フライパンの上手な扱い方・付き合い方


手入れをしながら道具を育てていく喜び

熊澤さん 「食材がくっついてしまうという話をよく聞きますが、その原因はたいてい予熱が足りないことにあります。鉄のフライパンは煙が出るくらい空焚きをして、しっかり予熱することが大切です」

またお手入れのポイントは、二つあると熊澤さんは言います。
「一つは水分を残さないこと。洗ったあとはふきんやキッチンペーパーなどで水気を拭き取り、火にかけて水分を飛ばしてください。もう一つは、洗剤を使わないこと。せっかく鉄に馴染んだ油の被膜が取れてしまうからです」

洗う際は、お湯とたわしがベスト。特に棕櫚(しゅろ)という天然素材を使ったたわしは柔らかく丈夫なため、フライパンを傷つけずに汚れをしっかり落とすことができるそうです。
熊澤さん 「鉄のフライパンは使えば使うほど油が馴染んで表面がコーティングされ、良い道具に育っていきます。どんどん使い込んでみてください」

短時間でふっくらおいしい「銅厚手たまご焼器」


すっと手に馴染む、使い勝手の良いサイズ感

釜浅商店でも長く取り扱ってきた銅のたまご焼器に、厚手のタイプが加わりました。

熊澤さん 「1.2mmの厚みから、プロ仕様の商品に使われることが多い1.5mm厚にしました。厚手にすることで蓄熱性が高くなって柔らかい火が入るので、短時間でふっくらと仕上げることができます」

そうはいっても熱伝導が良い銅の素材。焦げ付いてしまうのではと心配される方もいらっしゃるそうです。しかし熊澤さんは、上手に焼けるようになるまでの過程も楽しみの一つだと言います。

熊澤さん 「私も何度も失敗しています(笑)。でもそれも楽しいじゃないですか。油の量を調整してみたり、火加減を変えてみたり。いろいろ工夫しながら試すことで、自分に合うようになっていきます。そうした過程も、良理道具を使う喜びです」


ちょっとした炒め物にも揚げ物にも使える汎用性

また熊澤さんは、たまご焼器を自由な発想で使うのも面白いと言います。「実はこの商品、揚げ物にも具合が良いんです。特に春巻きは少量の油でカラっと揚がりますし、油が馴染むのでその後のたまご焼きも作りやすくなります」

小さい方の10.5cmサイズでは、たまご一個でもきれいなたまご焼きが作れるそうです。またサイズを大きくすれば奥行きがでるので、焼き野菜と焼き魚など二つの料理を同時進行させることもできて、忙しい朝のお弁当作りに活躍します。

お手入れのポイントは、水気を残さないこと。ただし鉄のフライパンと違って、空焚きをすると内側の素材が痛んでしまうため、洗剤を使わずにたわしなどで洗ったら、水気をしっかり拭き取ってください。

良いまな板って何だろう?「庖丁にやさしいまな板 黒」


コントラストがはっきりして見えやすい黒色のまな板

ご存じですか? 包丁の切れ味が悪くなる原因の一つが、実はまな板にあることを。

熊澤さん 「包丁は、まな板が柔らかいほうが長持ちします。そのため、木のまな板はとても理にかなっています。けれど傷みやすかったり、カビが生えやすかったりしてお手入れが難しいため、扱いやすいプラスチック製が普及しています」

その一方で黒色のまな板は、食材とのコントラストがはっきりして見栄えが良いため、近年ではオープンキッチンのレストランなどでも採用されています。

そこで釜浅商店は、それぞれのまな板の良いところを掛け合わせた新商品を、岡山県の天領まな板と一緒に開発。一般的なプラスチックよりも柔らかい素材・酢酸ビニル(EVA)を使用し、さらに黒色にすることで、包丁にやさしく見た目も良いまな板を生み出しました。また漂白剤も使用できるため、お手入れも簡単です。発売からすぐに評判となり、いまでは常に品薄状態の人気商品になっているそうです。

熊澤さん 「まな板に関して、みなさん潜在的にこれでいいのかなと思っていたのではないでしょうか。そこにまな板の良い理をお伝えしたことで、支持をいただけたのだと思います。私もスタッフから“まな板のことを考えてもらうきっかけを作れたのでは”と言われ、ハッとしました」

ご自宅用にもプレゼント用にもおすすめの「庖丁にやさしいまな板 黒」。お手入れについては、熱湯消毒はできませんが、漂白剤が使用できるので衛生的に保つことができます。また傷や毛羽立ちが目立ってきたら、専用のやすりを使ってメンテナンスすることも。その程度がひどい場合は、釜浅商店に削りなおしを依頼することもできるそうです。

ライフスタイルに合わせて無理なく心地良く


“長く使ってほしいから”道具の説明をしっかりと

道具との良い関係を築くには、その特性を理解することが大切だと熊澤さんは言います。「私たちはただ売れば良いとは考えていません。買ってよかったと思ってほしいですし、長く使っていただきたい。だから私たちは専門店の使命として、道具の説明をしっかりしたうえで、困りごとがあればいつでもご相談くださいとお伝えしています」

手入れをしながら、自分だけの道具に育てていく喜び。熊澤さんは最後に、良理道具とのより良い付き合い方について、こんな言葉で結んでくれました。

熊澤さん 「いくら鉄のフライパンが良くても、毎朝のお子様のお弁当作りに使うのは大変かもしれません。それぞれのライフスタイルがあるので、例えば休日に使うなど、暮らしに合わせて楽しんでいただけたらうれしいですね」

大野貴之

コピーライター
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