野菜を皮ごと食べると何が起きるか
2023.12.26
「STEWARD LEADERSHIP25」は、アジア太平洋地域で、持続可能な環境と社会の実現に向けて活動する優れた企業を選出するアワードです。毎年25のプロジェクトが選出されるこのアワードに、2023年11月、初めて日本企業が選出されました。表彰を受けたのは株式会社ランドリンクが進めている「野菜を皮ごと食べる活動」。学校給食の現場からスタートし、各地で取り入れられつつあるこのプロジェクトは、いくつもの問題を複合的に解決しながら、野菜をよりおいしく食べられるうれしい活動です。
栄養も食品ロスも
給食は食べる教材。食育は将来にわたって健康を育む重要なもの
野菜を皮ごと食べることが、環境関連の取り組みとして国際的に評価されたのはなぜでしょうか。
理由のひとつは食品ロスを減らせることです。日本で1年間に廃棄される食品は、約523万トン。「そういえば、飲食店や宴会場でお皿に料理がけっこう残っていて、もったいなかったな」と思い当たる人も多いでしょう。確かに外食産業の食品ロスや、スーパー、コンビニなどの店舗で賞味期限切れになる食品は多そうです。
でも実は、523万トンのうち半分近い244万トンが家庭から排出されているというのです。家庭での食品ロスの原因は、やはり賞味期限切れや、作りすぎて食べきれなかった食べ物など。それに加えて、野菜や果物の皮や、根のまわりなどの捨てている部分も意外と多いのだとか。
野菜や果物には、皮や種、根のまわりの部分などに栄養が多いということをご存知でしょうか。たとえばニンジンの皮には、ニンジンの中心部の約2.5倍のβカロテンが、リンゴやゴボウの皮には実の約2倍のβカロテンが含まれています。血液サラサラ効果で知られるタマネギの皮の茶色い部分には、サラサラ効果のもととなるケルセチンが中身の約20倍も含まれているといわれます。
学校給食から広がる輪
食材の栄養のある部分を捨てて、生ゴミを増やしている。そんな矛盾を解決しようと動き出したのが「栄養まるごとプロジェクト」です。スタートは、青森県八幡平市にある学校給食センターでした。学校給食という、いちばん安全性や栄養チェックに厳しい現場からはじめること。それは野菜を皮ごと食べること、これまで捨てていた部分を食べることの安全性や意義を伝えることにつながります。皮は栄養の宝庫であり、おいしく食べることができるという食育にもなります。
そしてもうひとつ、子どもたちを栄養不足から守りたいという願いも込められています。近年深刻化しているのが「隠れた栄養不足」。味や見た目をよくするための品種改良や、自然から離れた栽培方法などによって、野菜に含まれる栄養が低下しているからです。厚生労働省が推奨する1日の野菜摂取量を守り、野菜をしっかり食べていると思っていても、栄養は足りていないということが起きています。
栄養が少なくなった野菜の中で、一番栄養がある部分を捨ててしまっては、ますます必要な栄養素をとるのが難しい。そのためにも、野菜をまるごと食べることには大きな意義があります。
安全でおいしいの仕組み
「栄養まるごとプロジェクト」では、野菜の摂取量が手軽に測れる機器「ベジチェック(カゴメ社開発)」を使用して、児童の野菜摂取量を計測しています。皮ごと給食を実施前と実施後を比較すると、1ヶ月で83%の児童の野菜取得量が増えた学年もあるのだとか。数値で成果が見えることで、児童や保護者の意識が変わり、野菜を積極的にとったり、家庭でも皮ごと食べたりという影響が広がっているといいます。
ただし、野菜を皮ごと食べるときに気になるのが農薬や汚れなどです。特に薬剤は水洗いではなかなか落ちません。そこで「栄養まるごとプロジェクト」では、食材専用の洗い水「ベジセーフ」で野菜を洗っています。99/98%以上の純水にカリウムを加えて電気分解した水の力で農薬、防カビ剤などの有害物質をしっかり除去します。野菜の鮮度を高めたり保ったりする作用もあり、ベジセーフで洗った野菜は歯応えがよく、風味がしっかりしているという声もあります。
野菜の栄養をムダにすることなく安全に、しかもおいしくいただく。そして生ゴミが減る。国際的にも注目を浴びる「栄養まるごとプロジェクト」は、今後、ますます広がっていくことが期待されます。