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着物は、最もエシカルな衣服。永く大切に着用するための知恵と工夫

着物は、最もエシカルな衣服。永く大切に着用するための知恵と工夫

着物は日本の歴史や文化を象徴し、温故知新の精神が色濃く表れている大切なものです。しかし、現代の日本では、その大切な文化や価値観が薄れてきている側面もあります。こうした中で、「七緒」は2004年秋の創刊以降、着物を中心とした日本文化の魅力を、身近に、丁寧に発信し続けています。そこには、あうんエシカル百科店が大切にしている温故知新の考え方と共鳴する部分があります。本記事では、着物の季刊誌「七緒」の編集長である鈴木康子さんと、IMA代表・あうんエシカル百科店スーパーバイザーの水野誠一さんによる対談を通じて、着物の魅力や着物文化を継続させていくために必要なことなどについて伺いました。前後編にわたってお届けします。

着物には、洋服と変わらない楽しさや心地良さがある

ーーお二人は、普段からどのようなシーンで着物を着用することが多いですか?

鈴木:私は、今となっては仕事で着ることが多いですね。着物を身に纏うことで気が引き締まり、大切な日には敬意を示せる素晴らしい衣服だと感じています。それとは別に、着物を着ると、日常がちょっと非日常に変わるような感覚もあります。私にとって、着物は気分を切り替えてくれるアイテムです。


着物からはじまる暮らしを提案する季刊誌「七緒(ななお)」編集長 鈴木康子さん。早稲田大学卒業後、プレジデント社入社。食のエンターテインメント誌「dancyu(ダンチュウ)」編集部にて、約100冊の月刊誌やdacyu別冊の発刊に携わる。食と器への興味からはじめた茶道の稽古で着物に出会い、熱が高じて2004年に「七緒」を同社にて創刊。以降、編集長を務める。

水野:僕は着物がすごく好きなので、家ではほとんど着物を着ています。洋服は仕事のための服という感覚があるので、家に帰ったらまず洋服を脱ぎ、着物に着替えることで、仕事を脱ぐ感覚でリラックスできます。男性用の着物は、紐が2本あれば簡単に着用でき、補正なども必要ありません。洋服と変わらない楽さがあるし、締め付け感がないので、心地良いんです。


IMA代表/すみだ地域ブランド推進協議会理事長 水野誠一さん。かつて西武百貨店社長として時代をリードする様々なライフスタイルを提案してきた水野さんと行政がタッグを組んだことが、ものづくりのまちに大きな変化を生み出すきっかけとなりました。「あうん(a・un)エシカル百科店」ではスーパーバイザーを務めています。

時間や世代を超えて受け継いでいくために

ーー時間をかけて大切に作られた着物を永く大切に着るために、何かされていることがありますか?

鈴木:今日は、七緒を創刊する約19年前に初めて自分で呉服屋さんにお願いして仕立ててもらった着物を着ています。よく着用していたので、裾部分の裏地を取り替えたり、サイズの仕立て替えをしたりと、丁寧に手入れしながら大切に着ています。


七緒創刊時に、鈴木さんが初めて呉服屋さんで仕立ててもらったという着物。19年経った今でも、その美しさを保ち続けている。

ーー今日は、仕立て直しをした着物もお持ちいただいていますね。

鈴木:これは、私が仕事でお世話になっている着付けやスタイリングをなさっている80代半ばぐらいの先生から、もう着なくなったからと譲っていただいたものです。元々その方が羽織で着ていらしたものを、2本の帯に仕立て直したそうです。帯は着物と構造が違うので、多少縫い目が入っていますが、結ぶと見えなくなるので何も問題ありません。このように、着物はアイテムを超えた仕立て直しも可能なんです。

鈴木:洋服は流行や体型の変化によってリフォームが難しいことがありますが、着物は布が全て直線裁ちになっているので、端同士を縫い合わせて、また1つの反物(たんもの)に戻すことができる仕組みになっています。完全にパターンが決まっているからこそ、着物が反物に戻って、また着物になってというように、永遠に循環していくことができるのが、着物の成り立ちそのものなんです。


裾が擦れて穴が開いてしまった場合は、下部の裏地を張り替えることで元通りに。表の生地自体に穴が開かないように、袘(裏布を表に折り返して縁のように仕立てること)をつけて仕立てる。

水野:着物は、最高にエシカルな衣服だと思っています。世代を超えて、着る人の体型に合わせて作り直すことができるのは、素晴らしいことですよね。「

ーーだからこそ、着物は世代を超えて受け継ぐことが可能なんですね。

水野:仕立て直しはプロに頼むとどうしても時間とお金がかかるので、簡単なものは自分でやってしまいます。箪笥の奥で寝ている着物を活かすことが大事なので、普段着で着るものくらいなら、自分でやる選択肢もありますよ。

鈴木:水野さんのような方がそう言ってくださると、これまでハードルが高いと感じていた人も、少し気持ちが変わるような感じがしますね。

​藤井由香里 Yukari Fujii

京都出身、都内在住。環境問題や日本の文化、ものづくりの背景に興味関心を持つ。 現在は、フリーライター・エディターとして多岐にわたる分野で取材・執筆・編集を行う。
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