コラボTシャツにかける我喜屋位瑳務さんからのメッセージ
2024.07.22
対談 我喜屋位瑳務(アーティスト)×丹地良子(あうん百科店ディレクター)
今回、我喜屋位瑳務さんと対談したあうん百科店ディレクターの丹地です。最初はわたしが一方的に話している状態からスタートしていますが、最後に行けば行くほど、いさむくんのいい話を聞けているので、最後まで離脱せず、読んでもらえると嬉しいです!
by あうん百科店ディレクター丹地
あうん百科店編集部(以下、編集部):今回、我喜屋位瑳務さんとあうん百科店で、コラボTシャツを制作することになりました。その背景と我喜屋さんの制作されたアートに込める思いなどをお聞きできればと思います。担当としてかかわったディレクターの丹地良子とは友人ということで、お二人にお伺いしていきたいと思います。よろしくお願いします。
丹地良子(以下、丹地):友人ということになっていますけど、実際にお会いしたのは、J-WAVEのイベントの時だったんですよね。だから2回目?
我喜屋位瑳務さん(以下、我喜屋):そうですよね。
丹地:いま、個展「You and Me」のギャラリーの空間に身を置いていろいろ感じていて。いさむくんが、毎日ドローイングを描いていたのは知ってたけれど、新作のペインティング含めて、表現の仕方とかバリエーションがいろいろあるんだなと。
我喜屋:そうですね。
2018年から始めたドローイング
丹地:わたしはインスタをフォローしているから、女の子のドローイング見てるけど、ほぼ毎日あげてるよね?
我喜屋:ほぼ毎日。描けてないときもありますけどね。
丹地:だから、女の子のアートについては認知しているけれど、こっちの(過去の)アートピースは全く違う表現なんだね。
我喜屋:もともとは、ずっとこういうコラージュやドローイング、ペインティングを制作していました。2018年ぐらいかな?息抜きでドローイングを描くようになりました。こっちのほうが人気になっちゃって(笑)。
東京都江東区のMasumi Sasaki Galleryで2024年6月8日(土)から7月13日(土)まで開催された個展「You and Me」
丹地:ハマるよねー。いさむくんの描く女の子って独特だよね。あまり笑っていないというか。いまの世の中を表現しているのかな。いまって偽の笑顔が溢れているとわたしは思っていて。
我喜屋:思いますね。
丹地:思うよね。いさむくんの描く女の子を通して、すごいメッセージが伝わってくるよね。アート作品の中に文字が書いてあるわけじゃないけれど、女の子の視線とかを見ていると伝わってくるメッセージがあるよね。怒りとか。もしかしたら悪魔を表現しているのかもと感じるときもある。
我喜屋:そうかもしれませんね。
丹地:キーワードとして動物たちが出てくるでしょ?女の子の近くに必ず動物がいて、彼女に寄り添っている。実は女の子が一番心を許しているのが(人間ではなく)動物なんだって感じた。そこにシモンくん(先日亡くなった、我喜屋さん相棒のモルモット)やモンスターたちがプラスされている。シンプルな生き物として、人間よりも動物のほうが女の子に近いっていうか。
我喜屋:そういえばあのとき、すごいこと、言っていましたよね。
我喜屋位瑳務(がきやいさむ)/アーティスト
沖縄出身。コミックやホラー、SF映画などのアメリカンカルチャーからインスピレーションを得て、ドローイング、コラージュ、ペインティングなどを手がける。広告、雑誌、アパレルなどの作品を生み出している。2024年6月8日(土)- 7月13日(土)まで、東京都江東区のMasumi Sasaki Galleryで個展「You and Me」を開催。過去作のペインティング、コラージュに加え新作のペインティングを披露している。
丹地:え?コラボ企画について話したとき?わたしなんて言った?
我喜屋:人間よりも動物に地球を任せたほうがいい、って。
丹地:そうそう、人間が生きていると地球を壊していくから、もう動物に地球を任せた方がいいんじゃないって(笑)。
我喜屋:そう、そういう話をされたんですよね。それ、僕の考えていること、完全に言い当ててくるな、この人って思って。
丹地:人間は地球上においては、もう自分のことしか考えてないとか、自分が他者にどう見られるかとか、そう考えてる人達がSNSの中心となったこの時代に、急に多くなったような気がして。地球で何が今起こっているか興味のある人とない人の層が、はっきりしてきたように感じてるの。
我喜屋:そうそう、言い当てられたなって。
丹地:かといって、「エシカルでなければ」とか「地球平和」とか、いさむくんは、正義感をかざして、メッセージを伝えるようなことはないよね。そこが大好き。ニヒルな感じでちょっとひねって。それって狙ってる?
我喜屋:あんまり大きいテーマを掲げるのは、個人的にどうかなと思っていて。身近なもののほうが共感してくれるんじゃないかなと思っている。
丹地:インスタのドローイングを毎日見ていると、なんとなく潜在意識にメッセージが刷り込まれていく、その感じがすごいよね。
動物愛護活動の支援を始めたきっかけ
丹地:いさむくんの作品って、なんか見ていると、「動物に優しくしろ」みたいなメッセージがあるのかなと思って。
我喜屋:そうですね。そういう作品もありますね。「動物を殺すな」っていうメッセージの。殺された動物を弔うことをイメージしました。
中央の茶色い布の袋の作品は殺された動物を弔うイメージ。「動物を殺すな」というメッセージが込められている
丹地:動物が好きになったのは、いつから?
我喜屋:沖縄の実家で、にわとり、あひる、猫、犬を飼っていました。2022年7月に、「ANIMA」という動物チャリティーイベントを行ったんですけど。ペットの保護活動を支援している人のためのお金を作って寄付をすることを目的としていて、ミュージシャンとかアーティストとかが協力してくれて、想像以上の収益を得ることができました。それを5、6カ所ぐらいに寄付させてもらいました。
丹地:行動してどうだった?
我喜屋:もっと続けていかなくちゃって。お金を作っただけなので、あまり助けにならなかった。なにか足りなかったというか。
丹地:足りなかったっていうのは、お金だけじゃなくてマインドとか?
我喜屋:難しいですよね。便利なものとか、人間が覚えてしまったら元には戻れない。もう十分進歩したから立ち止まって、共生するにはどうしたらいいかをみんなで考えられるようになれば最高だと思います。
丹地:人間が環境を壊しているので、生態系も崩れているしね。まずは自分たちで出来ることから始めることってなにかな?そう考えるようになったの。
我喜屋:僕らができることは、ペットの保護活動をしている人を助けることかなと。イルカとか畜産とか、いろいろあると思うんですけど、あまり広げちゃうと自分が抱えきれなくなるので。まずはペット保護活動の支援だと思っています。
丹地:わたしも思いはあるけど、活動はしていなくて。そのアクションをするには、いろんなことを想像して時間が足りないと諦めてしまって。エシカル活動をすることは、意識的にハードルが高いけど、素敵な商品を買いたいという気持ちが結果的に誰かの笑顔に繋がったり、寄付したりすることになる。そんな仕組みを今回いさむくんと企画できたことが、とても嬉しい!
丹地:ちなみにモルモットはなぜ飼い始めたの?
我喜屋:モルモットは高校生のときに、当時沖縄で、彼女と一緒に動物園に行ったんですよ。初めてモルモットをみて、ずんぐりむっくりで可愛いってなって、彼女に中入ろうっていったら、気持ち悪いって言われて。ずっとそこから気になっていたんだけど、12年前に東京で初めてモルモットを飼いました。
丹地:そのときどうだった?
我喜屋:もう一生分の可愛いね、可愛いねを言ったんじゃないかっていうぐらい。
丹地:1匹1匹、外からみたら一緒だけど、全然性格が違うって聞いたよね。
我喜屋:ずっと一緒にいると、一緒にいるからわかることが沢山あるんですよね。シモンがいなくなって数か月が経ちましたが、いい出会いがあったらまたお迎えしたいなと思って。
あうん百科店のコラボTシャツにアートについて
丹地良子(たんちりょうこ)/あうん百科店ディレクター
H.P.FRANCE、H.P.DECOを経て、フリーのクリエイティブディレクターとして活動。ボーホーシック(「ボヘミアン」とNYの「ソーホー」をかけ合わせた造語)なセンスが多くのファンから支持されている。Pizza 4P’sホーチミン本店などショップや国内外アーティストのプライベートルームのプロデュースを手掛ける。Instagram @muin0906/#
”あうん百科店でご紹介している商品も実用性だけではなく、感性が引き寄せるモノやヒトとの出会いを大切に、エシカルな商品を愉しんでもらいたいと思っています”
丹地:あうん百科店でアップサイクルのTシャツをキャンバスに見立てて、アーティストを掛け合わせたいと考えたときに、頭の中には最初からいさむくんにお願いしたいと思っていたの。
我喜屋:ありがとうございます。
丹地:一番嬉しかったのは、私がこの企画の相談をした時。私が多くの人に売りたいの!と本当にまっすぐ伝えた時に、いさむくんも同じように「僕も売りたいっ」って言ってくれたこと。売れることで何かメッセージが、いさむくんのファン以外にも届くことが本望。言葉なく伝えるのと、言葉を使って伝えるのと、モノを使って伝えるのと。それで素晴らしいものが上がってきました。
我喜屋:大丈夫でしたか?
丹地:素晴らしいなと思って。お話しして、すぐにイメージって浮かびました??
我喜屋:そうですね。お話し伺ってすぐ。
丹地:いさむくん、早いよね。描くのが。そして、降りてくるのも早いよね。
我喜屋:考えながらやることが多いですけど。こうやったら面白いかな、とか。でも、6年毎日ほぼドローイングを描いているので、(描く)筋肉がつくんですよね。
丹地:手に?
我喜屋:発想に(笑)。慣れてくるというか、早くなるんですよ。クライアントワークもすごく楽になりました。
今回のコラボのために描きおろした女の子のイラスト
我喜屋:今回のイラストのモチーフは女の子と人間にペットとして飼われている動物たちなんです。人間と動物たちがうまく共存していける世界を描きました。
丹地:動物は何匹だっけ?猫、うさぎ、モルモット、かめ、犬、鳥もいたね。感覚で描いていったの?それとも好きな順番とか?そうだ、ヘビもいたよね。
我喜屋:女の子の額をぐるっと囲んでいるヘビは「ウロボロス」をイメージしています。完全・永遠・無限・再生・循環を意味する生命の象徴です。人間に対して「もう少し考えて行動して欲しい」という願いを込めて描いてみました。
丹地:いさむくんは、こうもりとかも描いているよね。
我喜屋:あまりいいイメージがないと思いますが、中国では幸福の象徴らしいので、そこが好きなんです。宗教的なイメージで使われる。
丹地:女性は何を語りかけているの?あれに言葉をつけたら、どういうメッセージを伝えているんだろう?
我喜屋:さっきの話に戻る感じかな?
丹地:そっか、動物を殺さないで、かな?わたしには女神に見えたんだよね。この子(動物たち)を守らなきゃいけないっていう。
我喜屋:東京は価値観が広くて、どんな人も受け入れてくれる土壌がありますよね。沖縄のときは、そこは辛かったですね。こんな髪型もこんな格好もできない(笑)。
丹地:自分が出せなかったんだ。東京のほうが自分でいられるのかな。海外は?
我喜屋:海外は行ったことないんですよね。。。パニック障害があって。ずっと家にいるタイプ。家サイコーです。
丹地:あ、わかる、家サイコー。
会場ではハガキ大のドローイングも数多く展示PHOTOS BY SHUHEI SHINE
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