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モノづくりの墨田。江戸から続く温故知新。

モノづくりの墨田。江戸から続く温故知新。

前編でもご紹介したように、墨田区には、江戸時代から続く技術を継承する伝統産業や、金属加工業、石鹸等の化学メーカーやファッション産業まで、23区内トップクラスの多種多様な企業があります。そうしたものづくりに光をあて、行政がサポートしながら新たな地域ブランドづくりを行ってきたのが「すみだモダン」プロジェクト。東京スカイツリー開業にさきがけて2009年に始まり、独自のブランド認証も行いながら、数多くの魅力的な商品を生み出してきました。
「すみだモダン」担当の墨田区産業観光部の郡司剛英部長、ディレクターでデザイナーの廣田尚子さん、すみだ地域ブランド推進協議会理事長の水野誠一さんに聞いたすみだモダンのストーリー、後編です。

すみだモダンは、温故知新。

水野:すみだモダンは、一言で言うと「温故知新」がコンセプト。最初は、「あたらしくある、なつかしくある」、という言葉をコピーに使っていました。だから、あえて、すみだ、はひらがな、モダンをカタカナにして、古さ/懐かしさと、新しさという2つの対比で名前をつけたというのが、すみだモダンのはじまりです。


IMA代表/すみだ地域ブランド推進協議会理事長 水野誠一さん。かつて西武百貨店社長として時代をリードする様々なライフスタイルを提案してきた水野さんと行政がタッグを組んだことが、ものづくりのまちに大きな変化を生み出すきっかけとなりました。「あうん(a・un)エシカル百科店」ではスーパーバイザーを務めています。

-すみだモダンの取り組みは、時代のうねりを捉えた先進的な試みでもありました。

水野:20世紀は、とにかく「近代化」に邁進してきました。そして、大量生産、大量消費の時代になったけれど、それによる矛盾が、現在の環境問題や資源枯渇問題になったわけです。そこで、近代化でなく現代化という考え方が重要になってきた。現代化というのは、実は故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知るという考え方です。ここでいう「すみだモダン」とは、歴史ある=「すみだ」から発信する現代の課題解決=「モダン」、という意味。時代もその方向に向かっていて、13年前からの活動が、今再び編集され、広がり、成熟化していくように思います。


ヒロタデザインスタジオマネージングディレクターや、女子美術大学教授を務める 廣田尚子さん。

働き方や企業のあり方もデザインする。

-すみだモダンのコラボレーションは、デザインやアイデア開発だけでなく、仕事のやり方、企業の在り方までを考えるプロジェクトとして発展してきました。廣田さんは、単なるデザインワークを超えて、そうした新しい発想を生み出すサポートを行っています。

廣田:おひとりから、十数名ほどの会社まで色々な規模の事業者さんとご一緒してきました。そして、今度は、モノ作りだけでなく、働き方も変えながら、よりバージョンアップしたプロジェクトにしようということを、申し上げました。

COーDESIGN=みんなでデザインするというコンセプトを立て、デザインを提供するという関係性から、今度は、みんなでデザインする。つまり事業者さんもどんどん参加して自社をデザインする心持ちで、働き方から変えながらデザイナーと関わろうというご提案をしました。


墨田区役所産業観光部長 郡司剛英さん。事業開始4年目からすみだモダンに関わってきました。

すみだモダンは、民間発想アプローチ。

-すみだモダンは、いわゆるお役所仕事の枠を超え、売れるモノづくり、新たな販路開拓、企業マインドのリニューアル、そしてカッコいいブランド作りを目指してきました。その集大成として、10年目にはブランドの歩みをまとめたブランドブックを作りました。この本は、行政が作るお堅いものではなく、「売れる本にする」という強い思いを、プロの編集者がカタチにした素敵なデザインの本に仕上がっています。

郡司:すみだモダンは、いかにも行政的な取り組みではないんです。それは、最初の段階で行政的なスキームを排した結果だと思います。理事長を水野さんにお願いして、行政は事務局として関わるだけ。民間テイストで動き出した取り組みが、民間によってどんどん発展してきたということかなと思います。

水野:今、郡司さんも、あまり役所っぽくないと仰ってたけど、ブランドブックを作ろうという話になった時に、僕は、本として売れるものにしないと意味がないと言って、ハースト婦人画報社に編集してもらった。しかも背表紙を付けない特殊な製本にしたから、どこを開いて置いてもページが閉じてしまわないというエシカルな知恵も生きている。カッコいい本です。

郡司:ブランディングは、カッコよくないとダメですよね(笑)


『すみだモダン 手仕事から宇宙開発まで、“最先端の下町”のつくり方。』(墨田区産業観光部産業振興課 編纂、ハースト婦人画報社刊)。3,300円。書店で手に入れることができる。

「健全なえこひいき」が生み出したもの。

-行政の施策というのは、平等・均等が基本となることが多い。しかし、このプロジェクトは、その常識を破って、頑張る人を特に応援するという、「えこひいき」な活動でした。しかし、そのえこひいきは、事業者のやる気も刺激しました。

郡司:2012年頃、区の産業振興マスタープランのコンセプトは、「頑張る皆さんを応援します」でした。要は、頑張らない人は応援しない(笑)。だから、こういうプロジェクトに手を挙げてくれる人をサポートする。新商品開発を支援し販路開拓も協力する。墨田区は、2012年からスカイツリーの足元に「すみだまち処」という商業施設を持っていて、すみだモダンは、そのお店の真ん中で扱う。つまり、やる気のある人を積極的に応援する健全なえこひいきをやったわけです。

健全なえこひいきは、やりたいという企業の気持ちを動かし、参加希望の企業も増えました。

地元の企業に対して、行政はどんな形で、何が支援できるのか。その新しいカタチを、すみだモダンのプロジェクトは、具体化したといえるでしょう。

ぜひ、すみだモダンの魅力的な商品や事業活動をチェックしてみてください。

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